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「おはようございますー」
私達は声をそろえていって中に入っていった。会社といえでもそれほど大きくは無い。だが一端の中小企業としてやっていってる。そしてそれぞれ席に着いた。私は昨日のうちに、期限に少し余裕のある仕事を終わらせていた。あとは最後の校訂チェックだけだ。
「おい。はやくトイレにでも行って確認してこいよ。」
「えっ?何?」
「ほら、おまえの姿だよ。おかしいぜ?なんだかお前がいるのに向こうの壁が見えるみたいだ」
「気味悪いこというなよ。ちょっと確認してくるさ。」
私はそういって席を立った。
「どうせ確認したって何もおかしくはないさ。」
私はそう思いつつ、トイレへと行った。
会社のトイレはどこか不気味な雰囲気を保っている。これは放つというより保つなのだ。強くも弱くもない不気味さなのである。私は鏡を見た。私は信じられないと思った。
本当に自分が若返っている。この姿は高校生くらいであろうか?一番楽しかった時期であり、一番輝いていたと思われる時期の姿である。さらに驚くことに、私が鏡に映っているのだが、私に重なるようにして、後ろのトイレの壁が写っている。ポスターには「きれいにつかいましょう」と。
有田の言っていたことがあながちうそではない。私はふと思った。昨日夢で見た事故。そして月を探している男・・・私の中でそれらが一本につながった。
私は死んだのか!?
その言葉が私の脳裏によぎる。死んだと仮定すれば、あの男や事故、そして何より自転車のつじつまがあう。しかし、なぜ有田に私の姿が見えているのか。そこは矛盾する。もし有田が例外であり、死んだということがただしければ、私の姿はほかの人には見えない。ほかの人間にも見えれば、私は死んでいないという可能性がある。私は確かめずにはいられなかった。私は大急ぎで私のデスクに戻った。
「有田!マジで若返っちゃったみたいだ。いや、もしかしたら俺死んだのかも・・・」
私はあきらかに動揺してこういった。有田には察しがつかなかったようだ。
「は?何いってんだよ?俺にはこうしてみえてるし、現に鏡に映ったんだろ?だったら問題ないじゃねぇか」
「俺、確かめてみようと思う。俺がお前にしかみえてない可能性がある。もしそうだったら、お前は一人で壁に向かってしゃべっていることになる。」
「は?俺が壁に向かって一人で?そんなわけないだろ?それにどうやって確かめるんだよ?」
「・・・信彦を一発ぶってみる」
信彦とは、私が勤める、中村商会の社長息子である。次期社長が保証されている分いつもいばっている。私たちは普段から彼に対して不満があった。
「おいおい。そりゃ、ぶってみたい気持ちはわかるけどよ。もし見えてたらどうすんだよ?クビだぜクビ」
「見えてない自信がある・・・」
「まぁ・・・お前がそこまでいうんなら止めないけど」
私は、信彦を探した。しかし、彼はまだ来ていない。
「ちっ。遅刻か。」
私は彼が来るのを、彼の席に座って待つことにした。彼は、私たちと同じ28歳である。いつも社長である父のそばにいる。いつもいばっているのと、贅沢やら運動不足のせいで見た目はとてもじゃないが同い年には見えない。私は彼の椅子に腰掛けて、出入り口のほうを向いていた。
他の社員がやってくる。他の社員は私に声もかけず、それぞれ自分の席につく。いつもは挨拶するのに誰も私の存在に気づかない。その様子を有田は見て驚いている。私は妙な確信を覚えている。絶対に見えない。信彦に復讐するチャンスである。
数十分後、ドカドカという足音が聞こえてきた。あの重く、引きずるような足音は信彦だ。
「きたっ!」
私は少し前のめりになっていた。
ガチャ
扉が開く。そこにはドンと大きな図体。信彦だ!
「おはよう!諸君!今日も元気か!」
いつものように馬鹿でかい声で言う。
「ん!?おいっ!!花田!!お前どこに座っている!!」
「なっ・・・・・・」
「ぼさっとしとらんでさっさと自分の席につけっ!」
意外であった。彼には私の姿が見えている!周りの社員はいつもどおり信彦を無視している。私がそこにいたのかどうかなど確認するそぶりもなく、仕事をしている。有田は少しほっとした様子であった。私はますますわけがわからない。とにかく、信彦の機嫌が損なう前に自分の席に戻ることにした。
To be continued
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専攻は国文学で、「諏方縁起」を中心に研究を進めていました。
しばらく、更新していなかったのですが、やっとこさログインできるようになったので、更新していこうと思います。