[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「おい。やっぱりお前見えてるんだよ」
私が席に戻るとすぐに、有田は小さな声で話しかけてきた。
「信彦にみえるんだ。お前は生きてるよ。もう気持ち悪いこというなよ?」
有田はどこか不安げだった。私がまだ納得していないと察していたようだ。
「いや、信彦も例外なんだよ。」
「例外ってなんだよ?俺も例外か?」
「あぁ。きっとな。」
「でもよ、俺たちが例外だとしても、なんでお前はそんなに死んでるって決めてかかってるんだよ?」
「いろいろあってな。俺が死んでたら、すべてが納得いく。」
「はぁ・・・まぁどっちみてお前はこうやって生きてるんだから、どうしたって結果は変わりっこないよ」
有田はあきれた様子だった。しかし、私は納得いかない。私は次の行動に出ることにした。
「よし。」
私はそういって、隣のデスクに座っている、先輩社員にちょっかいをかけた。ちょっかいといっても、肩をたたいて振り向いたところを人差し指で押すといったことだが・・・私の様子を有田は見ていた。
私は振り向く。そして右手を少し上げて、彼の肩に振り下ろした。すぅーと私の手は彼の肩をすり抜けた。なんの抵抗もなく、彼の肩をすり抜ける。私は目を丸くした。有田は私よりもっと目が丸かった。
「げっ・・・まじかよ。」
私は自分で死を確認するつもりであったが思わずこういってしまった。どこかで私はまだ生きていると信じたかったのだろうか。有田は真っ青な顔をしていた。それをみた先輩社員は有田に
「どうした有田?浮かない顔だな?幽霊でも見たか?」
のんきな問いかけである。有田は何も返事できないでいた。先輩社員は変なやつだなというような顔をしたが特に気に留めてないらしい。
「こらっ花田!さっさと仕事しろ!」
遠目で見ていた信彦はのんきに俺をしかる。しかし俺は仕事どころではない。俺は本当に死んでいるのだ。仕事など、できようもない。
「おいっ花田聞いているのか?ちょっとこっちへこい!」
信彦はしきりに俺に言う。そろそろ、他の社員たちも異変に気づく。社員にとってみれば、私はいないのだ。そのいない私を信彦は呼ぶ。まったくもって、信彦が単なる変人にすぎなくなっている。
「副社長?花田は今日来てませんよ?」
ある社員が言った。ますますおかしなことになりそうだ。
「何をいう?今君の横に花田はいるじゃないか?それに今日、朝一に花田を見た覚えがある。」
「副社長?花田は私の隣にいませんよ?私には向こうの壁が見えますし。」
「おいおい。お前本当に大丈夫か?」
二人とも間違ったことは言っていない。二人とも正しいのだ。しかし、ふたりともおかしいのだ。
「副社長。私の目からも花田は見えませんが」
他の社員たちも言い出す。私はただ固まっているだけだった。あまりに社員が私の存在を認めないので、信彦はますます機嫌が悪くなっている。
「花田っ!こっちへきて、お前がいることを見せてやれ!」
信彦の無理難題な要求である。私が実際に存在していれば、いとも簡単なことではあるが、今は違う。それに、これでは私が幽霊であると証明するようなものである。私は決断した。こっから逃げる。私は一目散に駅へと向かった。
To be continued
04 | 2024/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
専攻は国文学で、「諏方縁起」を中心に研究を進めていました。
しばらく、更新していなかったのですが、やっとこさログインできるようになったので、更新していこうと思います。